皎天舎

《2018年12月26日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第4水曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した3冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


国宝(上・下巻)

著 者 吉田修一
発 行 2018年9月
出版社 朝日新聞出版

 −500回にわたって朝日新聞に連載された、作家生活20周年を記念した著者渾身の小説。− 

“歌舞伎”に憑りつかれた女形役者・立花喜久雄。かけだしの頃から国の宝となるまでの、その生涯を描いた一代記。1964年元旦、長崎での事件によって物語の幕は上がり、大阪、東京へとその舞台を移していきます。長崎一の極道一門に生まれ育った喜久雄は、組どうしの抗争で親方である父を亡くし、縁のあった関西歌舞伎の名家に引き取られ養子となります。生まれ持った美貌を持つ喜久雄は、「女形」として頭角を現し、しだいに歌舞伎役者としての華を開花させていきます。

しかし、出生と血筋をめぐる確執や数々のスキャンダルによって、世の人々の好機の目にさらされ、歓喜に沸く栄光と裏切りや喪失による絶望の波に翻弄されながらも、芸能を極めんと邁進するその人生は孤高の美を纏います。その世界に囚われ、極めた者の悦楽と葛藤、苦しみを耐える孤独が痛切なほどの熱量として伝わってくる作品。昭和から平成へと移りゆく高度経済成長の空気感、舞台や映画、そしてテレビと変わりゆく芸能界との距離感をバックに壮大なスケールの叙事詩が綴られる。

喜久雄の本当の幸せとは何なのか。 喜久雄が追求し、たどり着いた場所で眼に映る景色とは。華々しくも切実に脈打つ鼓動を、息吹をぜひ感じてください。

年末年始、力を込めてお勧めします。


BIRTHDAY BOOK 20歳のあなたへ

発 行 2018月11月
出版社 雷鳥社

  その歳の自分を知る。 その時の親の気持ちを知る。

 よくある育児日記とはちょっとだけ違った、 0歳〜20歳までの自分の子どもの成長を“子どものため”に記録する本。「20歳のあなたへ」 から始まるこの本は、お子さんが二十歳になった時に贈る、その子の人生をまとめ記した一冊になるでしょう。その歳ごとのページがあり、名前の由来や成長の記録、そして世の中の出来事などを記入することができます。好きな遊び、将来の夢、などなど年数を経て忘れてしまいがちなその時々のエピソードを両親が感じたままに直接書き残すことが出来ます。

ワンパクで大変だった、反抗期で気を揉んだ。そんなことが書いてあってもいいのかもしれません。二十歳になったとき、20年の歳月をこの本のページをめくりながら一緒に笑顔で振り返ることができたら。

子供が成人したとき、1冊の本として 親から子へ贈る。両親の想いが詰まった本、両親の眼差しが残した記録…… そんな温かい本を作ってみませんか。


旅する風

著 作 新宮晋
発 行 2017年11月
出版社 BL出版

 “風の旅”を表現したしかけ絵本。 

朝生まれた風は様々な場所を旅します。 森の中、牧場、砂漠、海……。 風が通り抜けた場所を、飛び出す仕掛けで表現。 独特な色使いも魅力的で、見ているだけで心が癒されます。立体的に飛び出した絵が、ビビッドな色合いに絶妙なコントラストの影を落とし通り抜ける風を演出。ページの片隅に書かれているテキストを追いながら風になった気持ちで楽しんでください。 お部屋の片隅に、インテリアとしても素敵です!