皎天舎

《2020年5月19日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第3火曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した2冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


数の女王

著 者  川添愛
発 行  2019年7月
出版社  東京書籍

 紙とペンを傍らに置いて読んでもらいたい「数の美しさ」をテーマにしたファンタジー小説。

とある世界に存在するメルセイン王国。この国の王妃の娘である13歳のナジャ。ナジャをはじめ国の人々は、王国から外に出る事は許されない決まりの中で、権力を持つ王妃に従い、そして支配された日々を過ごします。ある日ナジャは、王妃が呪いによって気に入らない人々や敵を殺しているということを耳にし、しかも数年前に死んだ最愛の姉ビアンカも王妃によって殺されたという噂を聞き……。その真実を確かめ人々を救おうと、恐怖と戦いながら敵に立ち向かっていく、そんなナジャの成長を描いたファンタジー。

ですがこの物語、ただのファンタジーじゃないんです。
人間一人ひとりに与えられた「運命の数」が軸となって進むこの物語は、様々なところで数字や数式が登場し、その数式をナジャが解いていくことで次の段階へと進みます。

カプレカ数、知ってますか?
「元の数を二乗した数を左右に分割して二つの数とみなし、それらを足し合わせると元の数と等しくなる特殊な数」
例 : 元の数45とし二乗する→45×45=2025→2025を20と25に分ける→20+25=45
このようになる数字はかなり珍しく、この物語の中ではこの数を持って生まれた人間はかなり最強な存在として登場するのです。

このような感じで、作中には素数や素因数分解など、習った記憶のあるものから、フィボナッチ数列、友愛数、リュカ数列、メルセンヌ数などなどが多数登場します。
この数式を知ったナジャはなぜこうなるのか?他の数字で当てはまるものは何か?を根気よく試し、理解していく様子が描かれ、読んでいる私たちも実際に確かめながら読み進める事ができます。

よくもまあこれだけの数式を物語に織り込むことができたなぁ…とただただ感嘆しながらも、読み終わった後には数の美しさ数式の楽しさ、そして可能性を感じずにはいられない不思議な感覚に包まれます。ついでに少し頭も良くなった気持ちになれるお得な一冊です。


きのうえのおうちへようこそ!

 作   ドロシア・ウォーレン・フォックス
 訳   おびかゆうこ
発 行  2017年10月
出版社  偕成社

ちょっと変わった女性、ツイグリーさんが住んでいるのは木の上の家。しかも飼っているのはニャンコという名前の犬で、一番の友達はクマ。たまに誰かが訪ねて来ても隠れてしまうほどに人と会うのが苦手で、食料などの買い出しはニャンコに任せっきり…という変わりっぷり。そんなツイグリーさんなので、町の人からも変人扱いで困った人として見られてしまいます。

そんなある日大きな嵐がやってきて、町が水で溢れてしまい人々は避難場所を求めて大慌て。木の上にある家は被害を免れ、人が苦手はツイグリーさんですが人々のために力を注ぎます。ツイグリーさんのみせた優しさ溢れる行動を見て町の人々の心も少しずつ変わっていき……。

災害や???など、普段と違った事が起きたとき、人は何ができるか、何をしてあげられるか。隣の人を思いやれることの大切さを優しく教えてくれる絵本です。