《2020年9月15日放送》
SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第3火曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した2冊の本を改めてピックアップ。
◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。
ザリガニの鳴くところ
著 者 ディーリア・オーエンズ
発 行 2020年3月
出版社 早川書房
1965年、アメリカのノースカロライナ州の街のはずれに広がる湿地帯で、街の人気者で将来を有望視されていた青年、チェイス・アンドールズが遺体となって発見された。その容疑者として人々から疑いの目を向けられたのが、その湿地帯に建っているさびれた小屋に一人で住んでいる少女、カイアだった。
1952年、6歳のカイアは家族とともにその湿地で暮らしていたが、酒を飲むと人格が変わり暴力をふるう父親が原因で、まずは母親が、そして3人居た兄弟も皆それぞれカイアを見捨て家を出て行ってしまう。その2年後、唯一の家族であった父親も姿を消し、カイアは誰も住んでいない湿地で一人生きて行く事に。学校へも行けず、読み書きも数字も分からないカイアだが、記憶に残る父親と母親の行動をまね、採った貝を売り家事をこなしかろうじて生きていく。そんなある日、湿地で釣りをしていたテイトという少年と出会う。テイトに読み書きを教えてもらい文字を知ったカイアは、読書や詩に目覚め、たくさんのものを吸収し、少しづつ大人へと成長をしていく。そんな時チェイスと出会い、カイアの人生は思わぬ方向へと狂い始める。
チェイスを殺した犯人は誰なのか?
捜査が行われている1969年と、カイアの成長を追う1952年からが交互に描かれ、その2つの時代が絶妙に絡まりあう中、物語は思いがけない結末を迎えます。
犯人を追うミステリー、少女の成長を描いた記録、格差社会や人種差別の問題を問い、そして野生動物や自然の美しさ・厳しさを描く、そんなたくさんのテーマを奥深くまで追求し描き切ったこの小説は、最初から最後まで読み手の心を掴んで離しません。カイアの視線の先にあるもの、感じた全ての一つ一つが胸を打ち、この本を読み終えるまでに何度、泣いて、手に汗握って、祈り、ため息をついたか……読後1ヶ月たった今もまだ、この余韻から抜け出せないでいます。
本を読んでいてよかった。この物語に出会えてよかった。そう思わせてくれた1冊です。
じゃない!
作 チョーヒカル
発 行 2019年8月
出版社 フレーベル館
きゅうりの皮を剥いたら……バナナ!?
いちご……じゃなくてアサリ!?
コーヒにドーナツが……えぇ〜〜!!
リアルなペイントで食材や物が大変身!
実際の物に絵を描いて別の物に見せるという、見る人の錯覚を利用した絵本。大人でも騙されてしまうリアルさで、これでCGでも合成でもいというのだから驚きです。最後のページにその制作風景も載っているので読んでみてください。
次々と現れる意外性に大人の私もついつい「っじゃないんかーい!」と突っ込んでしまいます。