《2020年12月15日放送》
SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第3火曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した3冊の本を改めてピックアップ。
◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。
52ヘルツのクジラたち
著 者 町田そのこ
発 行 2020年4月
出版社 中央公論社
52ヘルツのクジラとは……
他のクジラが聞き取れない周波数で鳴く事から、世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿は今も確認されていないという。(作中より)
大人たちの勝手な都合で、幼い頃から心身共に傷つけられて育った主人公、貴湖(きこ)。全ての人間関係を断ち切るかのように移り住んだ大分の海辺の小さな町で出会ったのは、痩せこけて全身にアザを作り、母親から「ムシ」と呼ばれ口がきけなくなってしまった少年だった。明らかに虐待を受けていると感じた貴湖は、少年を救いたいと心に強く思う。なぜなら貴湖にも誰かに助けてもらいたいと声なき声で叫び続けていた日々があったから……。貴湖はその声に気付いてくれた1人の男性と出会い救われたのだが、その男性が抱えていた苦しみの声を聴く事ができず、救う事が出来なかった。そんな深い後悔を償う意味でも、今度はこの少年の声を聞き逃すまいと奔走する。
少年を救う事はできるのか。そして貴湖の傷が癒える時はくるのか。同じ苦しみを抱いてきた2人が進む先に待ち受けるものとは。
徐々に明らかになる貴湖の過去や過ち、そして少年の生い立ちは、読んでいて辛く苦しく目を背けたくなります。でも、そんな彼らの苦しみに耳を傾けようする周りの人々の存在がとても温かく、その温かさに触れたことで苦しみから抜け出そうともがき必死で前を向く貴湖や少年の姿に、自然と涙が流れてきて…… 最後はとても優しい気持ちで読み終える事が出来ます。
DV、虐待、トランスジェンダーなど様々な問題を抱えた人々が描かれる本作ですが、もしかしたら自分の周りにも声にならない声で叫んでいる人がいるかもしれない。誰かに見つけて欲しい、助けて欲しいと訴えている人がいるかもしれない。そんな言葉に耳をすます事ができる人間でありたいと改めて感じました。コロナ禍という今まで経験した事のない日々を過ごしてきた今、特に読んでもらいたいと思った1冊です。
おおきいツリー ちいさいツリー
作・絵 ロバート・バリー
訳 光吉夏弥
発 行 2000年10月
出版社 大日本図書
大金持ちのウィロビーさんのお屋敷に届けられた、青々とした大きなクリスマスツリー。よっこいしょと家の中に運んでみると、あれれ?ちょっと大き過ぎてツリーの先っぽが天井にひっかかってしまいます。こまった執事がツリーの先っぽをちょん切って丁度いい大きさに整えて、切ったツリーの先っぽは小間使いさんにプレゼント。でも小間使いさんのお家でもちょっと大きくて先っぽをチョキン。その先っぽを庭師が拾ってまたチョキン、その先っぽを森のクマが拾って……。
ツリーの先っぽ連鎖のはじまりはじまり!
最後は、小さな小さなネズミ一家のお家にまで行き渡って、みんなでツリーに飾り付けをしてクリスマスのお祝いです。1本のツリーが大勢の人々や動物たちを幸せにしていく、なんとも可愛らしい絵本。
クリスマスツリーをかざろうよ
作・絵 トミー・デ・パオラ
訳 福本友美子
発 行 2020年10月
出版社 光村教育図書
皆さんクリスマスツリーの事、どのくらい知ってますか?
ある家族がツリーの飾り付けをしながら、ツリーにまつわる子供達の素朴な疑問に家族が答えていく絵本。
クリスマスツリーっていつからあるの?
誰が最初に思いついたの?
ツリーの飾りにはどんなものがある?
電気のライトを初めて使ったのはいつ?
どうしてツリーのてっぺんに星を飾るの?
こんなに身近なのに詳しくは知らなかった、ツリーのこと、絵本で学んでみませんか?
もうすぐクリスマス!
もうツリーは飾りましたか?ツリーの前でぜひ子供達に絵本を読んであげてくださいね。
メリークリスマス♩