《2023年9月15日放送》
◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。
SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第3金曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した2冊の本を改めてピックアップ。
私たちの世代は
著 者 瀬尾まいこ
発 行 2023年7月
出版社 文藝春秋
以前、妻が紹介した「そして、バトンは渡された」の著者、瀬尾まいこによる最新刊をご紹介します。
「私たちの世代」というと、皆さん何かしらの自分が属するカテゴリーを思い出すのではないでしょうか。まず、戦後のベビーブーム世代、そして、団塊の世代やバブル世代と続き、新人類という言葉もありました。僕たちの世代である、団塊ジュニア世代や就職氷河期世代があり、ミレニアム世代、ゆとり世代、最近では、Z世代と呼ばれています。
僕たちは、ロストジェネレーション「失われた世代」なんて呼ばれる、バブル崩壊後のせせこましい競争社会を必死に生きてきたわけですが、この小説は、「α世代」と呼ばれる若者たちが主人公です。Z世代から続くα世代、デジタルネイティブと言われる、ごく当たり前にデジタルに馴染んだ世代であり、I Tリテラシーが高く、SNSを駆使し情報収集、情報発信、人とのつながりを築くといった新しい価値観の中で育つ世代です。そんな中でも、この世代にとっての一番大きな出来事といえばコロナウイルスの蔓延ではないでしょうか。
主人公は、コロナ禍に子ども時代を過ごした二人の女性です。小学三年生の始まりから学校が休校となり、当たりまえの生活を奪われ、息がつまる日々を過ごした数年間。部活動や運動会、修学旅行など学校でしか経験できなかった多くの行事、そして人とのつながりを失なった世代。
きっとこの世代はコトあるごとに、コロナで学校に行けなかった世代と言われることでしょう。
コロナにより日常を否応なく変えられた子どもたちが、それぞれの思いを抱えながら成長し、失ったものを取り戻しながら大人になっていきます。友達や先生、親との関係が、絶たれ、歪み、形を変えていく。そんな時代に生きた子どもたちは、何を感じて、何を求めていくのか、数年分、少しだけ未来を描いて、子どもたちの青春に明るい光を当てています。
ほんの少しでも明るいものを差し出せる物語になれれば。そう著者がいうように、誰かを思う愛情がその誰かを支え、その支えが新しい扉を開く原動力になる。人と人がつながり、つながりから芽吹くささやかな幸せ、かけがえのない豊かな日々がやっぱり、確かにあったのだと、振り返って発見することができる、読後感の心地よい物語です。
恐れず、人と世界に関わっていこうと、思いを新たにできる小説でもあります。
もりのかくれんぼ どこかなどこかな、どうぶつ100ぴき
著 者 フィリップ・ジャルベール
訳 ふしみみさを
発 行 2023年6月
出版社 小学館
サイズでいうとB4変形と大きな絵本です。
この大きなキャンパス一面に描かれた細やかで繊細な線画。
ページをめくると、森の中に1匹の動物がオレンジ色で描かれ浮き立っていますが、
よく見てみると、実は他にも、深い森の中に動物たちがかくれんぼしています。
リスやシカ、狐などの親子が線画の中に描かれていて
眺めて楽しみ、探して遊べる絵本になっています。
ページをめくるごとに探す動物が増えていきます。全部で100匹にもなるんです。
最後のページには答え合わせもあり、何度も繰り返し楽しめる絵本になっています。