皎天舎

雨を読む。

陽炎がゆらゆらと目の前で揺れている。

高く昇った太陽は何にも遮られることなく一直線に陽射しを降り注ぎ、地面からの照り返しはまとわりつく暑さを帯びている。
外に繰り出せばたちまち汗が滲みだし、額を拭わずにはいられないほどだ。
“さて、どうやってこの暑さをやり過ごそうか”と頭を抱えた時を見計らうように、雨雲は突然姿を現し、ぐんぐんと頭上に押し寄せてくる。
雨粒たちは堰を切ったようにいっせいに降りだし、踊るように跳ね、軽やかで涼しげなリズムを奏ではじめた。
やがてひんやりとした風となって吹き抜け、私たちの身体の奥にこもった熱をやさしく逃がしてくれる。そしてどこかの家の風鈴をちりんと鳴らし、夏のはじまりを告げて颯爽と通り過ぎていく。

雨が止んだあとに降り注ぐ陽光は先ほどまでの力強さと打って変わって、きらきらと雨粒が輝く街にやわらかいベールをかけている。

「書肆 朝陽館」では、梅雨前後の色彩を失った曇天に彩りを添えるべく、季節の移ろいとともに色味が変化していく「天気の棚」を作りました。「天気の棚」は、雨雲レーダーやアメダスのモザイク模様が刻々と変化していくように季節の色に合わせて、棚の本がグラデーションのように少しずつ変化していきます。若葉香る新緑の5月から、梅雨の6月を経て陽射しが強まっていく7月を夏へと巡っています。

文学、絵本、詩集、エッセイ…ジャンルの垣根を越えて、天気をなぞるように移り変わっていく棚をお楽しみください。

季節や天気と連動し変化していく「天気の棚」

7月は、この色。

【白雨】(はくう)
雲が薄くて明るい空から降る雨。ゆうだち。

日本には雨を表現する言葉が数えきれないほど存在します。
素敵な雨の言葉をひとつ知っていたら、雨の日がより楽しいものになるかもしれません。

7月は、”梅雨を越えて夏へと向かっていく雄大な空”をコンセプトに、だんだんと雨雲が晴れていき、突き抜けるような青空に満たされていく様子をお楽しみください。
風の匂いや咲いている花から季節を感じるように、本棚からも季節を受け取ってみてはいかがでしょうか。

日に日に気温が上がっていくこれからの季節、冷たいお飲み物とその日にぴったりの一冊をご用意してお待ちしております。

雨雲の隙間から、もうじき夏が顔を出します。