皎天舎

新しいキャラクターが誕生しました!

朝陽館のイメージって?

 この地で150年以上も本屋を続けてきたのに、意外と名が知られていない。
それはこの店に携わるようになった初期のころに感じたことです。「ちょうようかん」ではなく「あさひかん」だと思っている方が多いことに驚きを覚えました。長野市には、朝陽と書いて「あさひ」と読む地名があるので、こうした事情がより分かりにくくしていることもありますが、もともと本屋がたくさんあり(中央通りだけで9軒)生活に密につながっていた時代には、店名など気に留めなかったのかもしれません。
 
 それは、私たち荻原家の者にとっても同じことが言えるようで、当店は明治期より様々な屋号をあげて商売をしてきました。当店で使用しているブックカバーにもいくつかの屋号が描かれています。《荻原商館》《朝陽館》《朝日屋》《書肆荻原》《菱屋 荻原磯右衛門》などなど、そして《書肆 朝陽館》。いまでいえば、ブランディングに無頓着。書家に揮毫してもらった看板はあれどロゴはなし。長い歴史の中で積み上げる印象というよりも、その時々に合わせて変遷してきています。昭和から平成にかけては「朝陽館荻原書店」でしたが、閉店や清算を機に、再建した後の屋号を《書肆 朝陽館》に改めました。そして、「朝陽館荻原書店」の後期に作ったものを踏襲し新しいロゴも生まれました。

 書肆 朝陽館をイメージするキャラクター。

 屋号やロゴのつぎに模索したキャラクター設定。屋号を上げていても人々の記憶に残ったかといえば微妙。そこで、親しみやすく、この店とつながる印象を抱いていただけるようにとキャラクターが必要だと思うようになりました。

 縁とは思いもよらぬところから舞い込んでくるもので、昨年10月に開催した「本と冒険」のフェア。この時にご紹介した絵本「P I H O T E K(ピヒュッティ)北極を風と歩く」は、北極冒険家の荻田泰永氏と絵本作家の井上奈奈氏の共著ですが、フェアの前段階からお二人には当店に足を運んでいただき、期間中も合同読書会やトークイベントの開催にご協力いただきました。

 この絵本で絵を担当した井上奈奈さんは、もう一人の著者、文章を担当した荻田泰永氏が営む冒険研究所書店のロゴの制作者でもありました。
そのロゴデータを見ていて、描かれた荻田さんのキャラクターの雰囲気の良さは素晴らしいのですが、文字の構造にも驚きました。最大限に拡大してみると文字に様々形が重なりアウトラインを形成していました。ある種の親近感を抱くと同時に羨ましくもなりました。

ストイックなアーティスト気質で、それでいてフランクなお人柄。クリエイティブに対する信頼感は大きく、きっと私たちの歴史をくんだうえで未来につながるキャラクターを考えてくれるのではないかと、井上奈奈さんに相談し、新しいキャラクターの制作を依頼しました。

第28回絵本賞大賞受賞&造本装丁コンクール日本書籍出版協会理事長賞 W受賞!

『PIHOTEK ピヒュッティ -北極を風と歩く​-』(講談社)が第28回 絵本賞の最高賞である
大賞を受賞しました。そして、造本装丁コンクール日本書籍出版協会理事長賞も受賞しました。
ちょうどこのキャラクターの開発中に発表された二つの賞、おめでとうございます。

燦々と昇る朝陽のような太陽の子

 「書肆 朝陽館」を運営する皎天舎。皎天とは、夜明け前の闇夜がしらじらと明るくなっていく様子を表しています。朝陽を一度沈めたものとして、再建した新しい店でもその歴史を吸収しようと時間をさかのぼって付けた社名ですが、井上奈奈さんが描いたキャラクターにはその想いが込められていました。

 夜が明け 白んできた空に生き生きと太陽が登りゆく様子を思い描き本キャラクター[太陽の子]を制作しました。[太陽の子]は書肆 朝陽館が掲げている[本が未来をひらく Books Open The Future]の言葉を身に纏っています。

特徴のある[太陽の子]のヘアースタイルは、いまも書肆 朝陽館の屋根に乗っている瓦をモチーフにしています。羽ばたく二羽の鶴から後光が差すように、燦々とした陽の光を放つめでたい意匠の瓦、明治初期からある様子がブックカバーのイラストから伺えます。この[太陽の子]に私たちは、【燦(サン)】と名付けました。


名前 : 燦(サン)
性別 : 不明
年齢 : 不明
身長・体重:変幻自在

特技 : 選書 
その人に必要な一冊を見つけることが出来る。

長所 : 神出鬼没 
いつでもどこでも浮かんで瞬間移動する。
普段は書肆朝陽館にある本の頁を行ったりきたりして暮らしている。

夏至を迎え、最も日が長いこの時期にお披露目となりました。

書肆 朝陽館では、この新キャラクター【燦】が登場するブックカバーや栞、包装紙などを作りました。早速店内で配布しています。
これからも様々なグッズに登場する予定です。Books Open The Future、その言葉を身に纏った燦をよろしくお願いします。

いつの時代にも寄り添える、いつも未来を見据えた、100年後もこの店にいるキャラクターに育てていきます。

本が未来をひらく。
お手元には一冊の本を。
その本には、いつも燦がいます。

作家プロフィール

井上奈奈(作家・画家)
16歳のとき単身アメリカへ留学、美術を学ぶ。武蔵野美術大学卒業。
国内外での個展やアートフェアにて作品発表を続け、2017年には著作の絵本『ウラオモテヤマネコ』『くままでのおさらい』の二作品が舞台化。2018年、絵本『くままでのおさらい』特装版がドイツライプツィヒにて開催された『世界で最も美しい本コンクール』にて銀賞を受賞。「P I H O T E K(ピヒュッティ)北極を風と歩く」が第28回日本絵本賞大賞受賞、造本装幀コンクール日本書籍出版理事長賞を受賞。
2022年、初の作品集となる『 星に絵本を繋ぐ 』を刊行。代表作/『猫のミーラ』『せかいねこのひ』『さいごのぞう』など 。