皎天舎

《2018年7月25日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第4水曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した3冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


ひとはなぜ戦争をするのか

著者  A・アインシュタイン/S・フロイト
発行  2016年6月
出版社 講談社

「人間を戦争というくびきから解き放つために、今何ができるか」

「世界最高の天才」と呼ばれた男、アインシュタインと人間の心の闇まで知り抜いたフロイトが、当時ならぬ現代でも全世界で大きく問題視されている“戦争”とそれを引き起こす人間の欲求というものを解き明かす。

二人がやり取りした手紙をもとに、養老孟子など著名人が二人の手紙の内容の解説を加えた一冊。第二次世界大戦を引き起こす一端を担った日本人として、戦争を生み出す人々の思考に目を向けてもらえたら・・・


ののはな通信

著者  三浦しをん
発行  2018年5月
出版社 角川書店

同級生の“のの”と“はな”
二人の少女の恋と成長を描いた、三浦しをん待望の長編最新作。
二人がやりとりしたメモ、手紙、はがき、そしてメール・・・。
全編書簡形式だからこそ伝わる二人の“想い”。
さすが三浦しをんと唸ってしまう一冊。


漢字はうたう

詩   杉本深由起
絵   吉田尚令
発行  2018年5月
出版社 あかね書房

「傘」
傘という字はあたたかい

おはいりなさい きみも あなたも
人 人 人
ねえ みんなつめてあげて
ほらほら まだひとり はいれるよ
そう いっているみたい

一つの漢字からイメージする詩を
可愛い絵とともに紹介する絵本。
こうして漢字を覚えたらとっても楽しいね。


 ー 番組内で話したことを1冊ピックアップ ー

『ひとはなぜ戦争をするのか』 A・アインシュタイン/S・フロイト
 1932年、国際連盟がアインシュタインに「今の文明においてもっとも大事だと思われる事柄を一番意見を交換したい相手と交わしてください」と依頼をした。そこで、アインシュタインが選んだ相手が、フロイト。そして、アインシュタインが選んだテーマは、
「人間を戦争というくびきから解き放つために、今何ができるか」というもの。
アインシュタインはフロイトに向けた書面の中でこう持論を述べています。
「人間には本能として相手を絶滅させたいという欲求がある。しかし国家が協力をして、一つの機関を作り、そこに立法と司法の権限を与えれば戦争は無くなるのではいか」と。
それに対してフロイトは、その意見に賛同しつつも精神学者の論点から“死の欲動”という概念を用いて解き明かそうとします。中でも興味深いところが、その死の欲動を抑制する概念として“文化の発展と戦争の関係”というものを以下のように述べてることです。
文化が生み出すもっとも顕著な現象は二つ。
一つ目は知性を強める事、すなわち力が増した知性は欲動をコントロールする。
二つ目は攻撃本能を内に向けること。
文化の発展が人間に与えたこうした心のあり方ほど、戦争というものと対立するものはほかにはない。だからこそ文化の発展を遂げた多くの人々は、戦争に憤りを覚え我慢がならないのではないか、と述べ、手紙の最期は、「文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩みだすことができる!」と力強い宣言でしめくくられます。
「世界最高の天才」と呼ばれた男と、人間の心の闇まで知り抜いたフロイトが、当時ならぬ現代でも全世界で共有する人類の問題である“戦争”とそれを引き起こす人間の欲求というものを、とても分かりやすく簡潔に書かれています。
 終戦記念日を前にして、第二次世界大戦を引き起こす一端を担った日本人として戦争を生み出す人々の思考に目を向けることも必要かと思います。
 
書店員