皎天舎

《2018年11月28日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第4水曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した3冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


ある男

著 者 平野啓一郎
発 行 2018年9月
出版社 文藝春秋社

−死んだ夫が全くの別人だったら− 

 里恵という女性から、ある相談を受けた弁護士の城戸。 子供の死をきっかけに夫と離婚し、実家の宮崎に戻った里恵は、 そこで出会った「大祐」と再婚し、つつましくも幸せな時間を過ごします。 ところが、ある日突然仕事現場の事故で大祐が亡くなり、里恵は衝撃の事実を知ることになります。 はじめて会った大祐の兄に大祐との写真を見せると、「こんな男は知らない、自分の弟ではない」と。 里恵が結婚していた「大祐」という人物は全くの別人で、何者かが「大祐」になりすまし、里恵と時間を過ごしていたのです。その男の正体を探ってほしいと相談をされた城戸は、 男の影を追いつつ、自身の生い立ちや家庭、仕事というものに葛藤しながらも向き合い、やがて一つの真実にたどり着きます。

 自ら選ぶ事のできない、消し去りたい過去を背負って生きる。 その苦しさを想像しつつも、本当の幸せとは何かを深く考えさせられる一冊です。


本を贈る

著 者 島田潤一郎・矢萩多聞・牟田都子・藤原隆充・笠井瑠美子・川人寧幸・橋本亮二・久禮亮太・三田修平・若松英輔
発 行 2018月9月
出版社 三輪舎

〈本を手にとり、そしてその本を買う〉

 ごく当たり前のように誰もが本を手に取り購入しています。 でも、その一冊に、どれだけ多くの人たちの手が関わり、思いがこめられて、自分の手に渡ってきたのか、その事に思いを巡らせる経験のある人は、決して多くはないかもしれません。編集者、装丁家、校正者、印刷業者、製本、取次、営業、書店員、本屋・・・ 彼らがどういう思いで「本」に向き合っているのか、そんな視点で描かれた一冊。こんなにもたくさんの人の手を通って、いま、自分に贈られてきた本。 そう思うと、昨日までの一冊が宝物のように感じます。

本の製作に関わる人たちによる、本を愛する人たちに贈られる本。装丁までお見事、大切にしたい本があります。


せかいいちのいちご

著 者 作:林木林 絵:庄野ナホコ
発 行 2018年7月
出版社 小さい書房

 ある日、シロクマのところに一通の手紙が届きます。

 『いちご おとどけいたします』

 「いちご」を見た事はあっても口にしたことが無かったシロクマは、その「いちご」を迎えるための準備に心おどらせます。初めての「いちご」 に語りかけ、見つめ、香りに包まれます。それから翌年には2つぶ。その翌々年には3つぶ・・・と、年々数が増えていき、ついには食べても食べても無くならないほどの「いちご」を手にすることができました。もっと、もっと。もっとの先にある「いちご」は何かがちがう。

 シロクマはふと思います。 増えれば増えるほど、嬉しさは減っていく。 いままでで一番おいしかったいちごは?って聞かれたら・・・

かわいくて、ほんわかしていて、見ていてウキウキしながらも、 どこか胸の奥がキューって切なくなる大人にも響く絵本。大切なモノを見失ってしまいがちなこの時代、手にした事の嬉しさを、その瞬間の喜びを忘れないでいたいなぁ。