皎天舎

《2019年7月24日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第4水曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した3冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


トリニティ

著 者  窪 美澄
発 行  2019年3月
出版社  新潮社

人生で手に入れられるものと、その代わりに手放さなければならないもの。

戦後の激動の時代、夢を追いかけ、たくましく生き抜いた3人の女性が描く三者三様の物語が世代を超えて動き出す。

戦後間もないころ、佃煮屋の娘として生まれた鈴子は、当時の女性としては珍しく出版社に勤め、男性たちに囲まれながら仕事をこなします。彼女の夢は、当時の女性の大多数がそうであったように専業主婦になること。結婚し子供を産み、自分の家庭を持つという将来像を描きながら日々の仕事に追われます。
そして出会った同じ出版社に出入りし活躍する2人の女性。
祖母、母親と親子3代物書きという肩書をもち、女であること、そして仕事に対して高すぎるほどのプライドを持つフリーのライター、登紀子。そしてもう一人、幼い頃に母親に捨てられたという過去を持つ、持って生まれた才能ある天才イラストレーター、妙子。

仕事よりも家族を支える事を選ぶ者、
仕事を第一に考える者、
家族と仕事の間で揺れ苦しむ者。

変化する時代に生じる新しい価値観と発揮される能力が、活気ある男社会の高度経済成長期に花を咲かせます。不器用ながらも気高く懸命に生きる3人の姿は、今の私達に生きる勇気を与えてくれるはずです。装画は昭和から平成を駆け抜け、令和を迎え85歳となったいまでも意欲的に活動を続ける宇野亜喜良氏。平凡パンチや創成期のananなどを懐かしく回想するにも、出版業界で働く夢をもった若者にも、そしてもちろん一級品の小説としても世代を超えて多くの人にオススメします。

女性だから。男性だから。ではなく。
一人の人間として現代社会で生きずらさや苦しさを感じている方。そして、迷っている方。

あなたを照らす光が、この小説の中で、あなたとの出会いを待っています。


柳宗民の雑草ノオト 夏

著 者  柳 宗民
発 行  2019年5月
出版社  毎日新聞社

民芸運動の旗手である柳宗悦の三男として生まれた園芸家・柳宗民。日々の暮らしの中にある用の美を再発見し活用する民芸運動の思想は宗民にも引き継がれています。周囲にありふれた雑草に光を当てた解説書です。

解説書といっても堅苦しいものでは一切ありません。写真ではなく、細かなところまで忠実に描写された雑草のイラストを元に、それぞれの雑草の名前の由来や生態をはじめ、著者とその雑草との思い出エピソードなどが面白く描かれています。ついついクスリと笑ってしまいます。

以前に同タイトルで刊行していたものを春・夏・秋と季節ごとに分けて再編集し、「定本」として蘇りました。今回紹介する「夏」にはノビルにブタクサ、ヒメジョオンなどお馴染みの雑草からヘクソカズラ(屁糞蔓!)やワルナスビなんていうなかなか耳にしない雑草など42種の雑草が登場。

地面の端っこによく見かける雑草。抜いても抜いてもしぶとく、むしろ生え広がるにっくき雑草。そんな雑草ですが、知ると案外愛おしく感じたりするものです。私たちにもっとも身近な植物を記録した「雑草ノート」、または、かわいらしい雑草の声を拾った「雑草の音」。

「雑草ノオト」のタイトルは、あなたにどう響くのでしょうか。


空の上には、何があるの?

著 者  シャーロット・ギラン作 /ユヴァル・ゾマー絵
発 行  2019年7月
出版社  河出書房新社

全長2.5メートルもあるしかけ絵本!

表紙の中にジャバラに折りたたまれたページを引き出すと、物語は地面がら宇宙へ向かって勢いよく上昇していきます。前作「地面の下には何があるの?」は、地表から地球の中心に向かって潜っていく冒険が話題を呼び大人気となりましたが、今作は反対に上を見上げ、空の先へと続く大冒険!

女の子が草むらに寝転んで空を見上げています。視線の先にはいつも見かける蝶々にかわいい鳥さん。その少し上にはハンググライダーやスカイダイビングを楽しむ人たち。さらに上、地上から2キロメートル先にはシュバシコウという渡り鳥。もっともっと上には、雲に流れ星に無限に広がる宇宙!めくるたびにどんどん広がる頭上の世界に、見ているだけでワクワクが止まりません。

距離ごとに何があるのか、何が起こっているのかが解説とともに鮮やかな絵で描かれているので、ちょっとした勉強にもおすすめです。