皎天舎

《2020年2月26日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第4水曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した3冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


スナック墓場

著 者  嶋津 輝
発 行  2019年9月
出版社  文藝春秋

2016年から2019年のオール讀物に連載された7つの短編をまとめた一冊。

ラブホテルで働く右手の指がない妹と、幸田文の小説に出てくる主人公に憧れ家政婦として働く姉との、ささやかだけど輝かしい日常を描いた「第96回オール讀物新人賞」受賞作である『姉といもうと』をはじめ、数々の短編集に取り上げられるなど、単行本発売前から注目を浴びていた著者のデビュー作。

ユキという少女が育った商店街での出来事を描いた『一等賞』では、商店街の人々の優しさや温かさを丁寧に描きます。ある商店街と隣り合わせで育ったユキ。ユキの近所に住む荒雄さんという男性は、お酒の飲み過ぎで幻覚を見ては商店街を彷徨うようになります。幻覚で混乱した荒雄さんは商店街を北から南へと移動し、店主たちと話す事によって次第に落ち着きを取り戻し自分の家へと帰っていきます。店主たちの連携プレーで荒雄さんを家へと誘う、そんな日常に誰一人嫌な顔をしない、むしろ楽しんでいるようにも見えるのです。

高校生となったユキが商店街の化粧品屋でアルバイトをしていると、幻覚を見た荒雄さんが「俺の目玉」を探しにきます。ここ数年同じ幻覚しか見ていなかったのに、目玉の幻覚は初めてで、店主達は皆狼狽えるのですが……。

平成?昭和?どこか懐かしさを感じる短編集。でも、きっとこれは現在のどこかにある日常の一風景であり、こんな人たちに隣りで暮らしていてほしい、そう願ってしまうじんわりと心にしみる一冊。


文庫本は何冊積んだら倒れるか

著 者  堀井憲一郎
発 行  2019年9月
出版社  本の雑誌社

立ち寄った本屋さんでふと目に止まり、ニヤニヤしながら“くだらないなぁ”と思いつつも、どうにも買わずにはいられなかった本。本のアレやコレやをゆるーく調査した本です。

タイトルにもある通り「文庫本を横に積み上げていったら何冊のところで倒れるか」を出版社ごとに調査してみたり。

他には、「本屋大賞受賞作のそれぞれの本の重さの比較」から1Pあたりの値段を比較してみたり。「週刊少年ジャンプで打ち切りになった漫画たち」を思い出してみたり、「レ・ミゼラブルでジャン・バルジャンが登場する行数」をその他の主要登場人物と比較してみたり、「新書のタイトルの長さ」を出版社ごとに比べてみたり。

もう、とにかく本にまつわるいろーんな事を調査します。
あ、そこ〜!!って感じで痒いところに手が届くような届かないような。まさにそんな一冊です。

新しい本の楽しみ方、かもしれません!?


ほしをさがしに

 作   しもかわら ゆみ
著 者  後藤正文
発 行  2017年11月
出版社  講談社

雪が降り積もったある森の中。

流れ星が落ちた跡を雪の中に見つけたねずみくんは、「雪が降ってからずっと遊んでいない大好きなもぐらくんに会いたい」という願いを叶えてもらおうと、流れ星の跡を追います。

道中うさぎやきつね、くまたちと出会いみんなで流れ星の跡を追いかけます。

星を探したその先にあったものとは。

大好きなもぐらくんとは会う事はできるのでしょうか?

リアルだけど可愛らしく、丁寧に繊細に描かれた動物達の表情に、見ていて自然と笑顔になってしまいます。動物達の視線やふるまいにも注目して楽しんでもらいたい絵本。