皎天舎

《2020年3月25日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第4水曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した3冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


たおやかに輪をえがいて

著 者  窪 美澄
発 行  2020年2月
出版社  中央公論社

家族とは。主婦とは。女とは。
様々な角度から見えてくる女性としての生き方を、窪美澄ならではの心地よい文章で描きます。

夫と20歳になる娘との3人家族で暮らしている主婦、絵里子。娘の反抗期など多少の問題はありつつも平穏に過ごしていたはずの結婚生活が、クローゼットの中から見つけてしまった風俗店のポイントカードがきっかけで崩れ始めます。夫のものだと分かりつつも真実を確かめる勇気がない絵里子は、夫だけではなく、娘をはじめ亡き父にも隠されていた真実があった事を知ります。主婦として完璧に家事をこなし、家族が凪の状態でいられるよう感情を抑え込む事が日課となっていた絵里子は、初めて抱いたコントロールできない怒りを鎮めるべく家を出ます。

そうして自分の足で一歩踏み出した絵里子は、同性愛者となった同級生の女友達、旅先で出会った病と闘う初老の女性、風俗店で働く美しい少女など、不安や苦しさを抱えながらも懸命に生きている様々な女性と出会います。彼女たちの生き様に触れ、改めて自分というものを見つめ直し、その結果出した「家族」への答えとは……。

前半は読むのが苦しくなってしまうほど、絵里子の心情や立場に共鳴してしまう部分が多いのですが、女性としての生き方やありたい自分というものを見出していく姿が描かれる後半は、読んでいて頑張れと私が背中を押されるような、そんな力強さをもらえる小説。

男性はもちろんですが、頑張っている女性、苦しんでいる女性にぜひ読んでもらいたい一冊です。


無脊椎水族館

著 者  宮田珠己
発 行  2018年6月
出版社  本の雑誌社

水族館にいる無脊椎動物といえば、クラゲに始まりイカ・タコ・イソギンチャクなど多数いますが、エイやサメといった魚たちと比べると、どちらかというと目立たないところに位置する存在。最後の方のエリアに有り、見つけてもらうのをひっそりと待っている、そんなイメージの無脊椎動物エリアなのですが、「このエリアこそ、もっともゆっくり時間をかけてみるべき」と著者は言います。ワケのわからないカタチと動き、その生態に呆れ、驚き、そしてフーっと肩の力を抜く事ができる、そんな癒しの時間と空間がギュっとつまった無脊椎動物エリアを、思う存分に楽しめるヒントを集めたのがこの一冊。

低迷していた業績をクラゲに特化した事で回復させた山形県の加茂水族館や、和歌山県にあるエビとカニを152種類集めた水族館など、19の水族館と150種類以上の海の生き物を、カラー写真とエッセイで紹介。

まずは、新潟県の寺泊水族博物館にいるらしいアデヤカキンコというカラフルで色鮮やかで、なんとも言えない気色の悪い物体(ナマコの仲間らしいのですが……)を見に行きたいと、個人的には思っています。


カムチャッカ号ヘンテコこうかい記

 作   中垣ゆたか
発 行  2018年6月
出版社  風濤社

眺めて、読んで、探して楽しい、大パノラマ絵本!!

15人家族のカムチャッカ一家が住む小さな島では、住民が増えすぎて島から人が落っこちてしまうほど。困ったカムチャッカ一家のお父さんは、新しい大きな島を見つけるために形はヘンテコだけど大きな大きな船を作り、島の住民や動物みんなを乗せて大航海へとくりだします。

たくさんの人を乗せた船「カムチャッカ号」が、嵐に襲われ恐竜に出くわしたりと大冒険の末に見つけた島とは……!?

ページがさらに広がり大パノラマの仕掛けで楽しめる「カムチャッカ号」の特大断面図は見ているだけでワクワクで、大人でも見入ってしまうほど。 各ページに描かれる島の人々の中に隠れている、15人のカムチャッカ一家の面々。そのキャラクター探しもたのしい一冊です。