皎天舎

《2021年4月20日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第3火曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した2冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


正欲

著 者  朝井リョウ
発 行  2021年3月
出版社  新潮社

普通ではない性癖、フェティシズムを持つ社会的マイノリティとされる人々を通して、多様性の在り方を問う衝撃作。

「小児性愛者」として逮捕された3人の容疑者たち。その事件は児童ポルノ摘発としてネットニュースでも取り上げられ、善人面をした悪魔として人々に知られる事となる。彼らはなぜこの事件を起こしたのか、目的は何だったのか。そして彼らは本当に悪魔なのか。容疑者に関係する様々な登場人物の視点で語られる日常や考え方を通して、次第に見えてくる容疑者たちの本当の姿。特殊な性癖を持つがゆえに自分を殺し生きてきた、彼らの声にならない叫びとは……。

普通とは、正しいとは一体何なのか。マジョリティとマイノリティのラインはどこにあるのか。そもそもそれを判断する立場に私たちはいるのでしょうか。多様性という言葉から発せられる魔力で、様々な問題が輪郭を失いつつも美化されがちな今の世の中。「人と同じじゃなくてもいいんだよ」「差別や偏見のない世の中」「みなが平等であるべき」それはきっと全て正解で、美しい言葉たちです。でも私たち人間はその言葉をどの立場でどの様に発する事が正しくて、またその資格を持っている人はどれだけいるのでしょうか。

自問自答を繰り返し何が正解で不正解なのかとことん分からなくなり、自分の内面や黒い部分を見透かされているような気持ちに苦しくなりながらも、それでも答えを見つけたくて最後まで読みました。その自問自答の答えはまだ出ていませんが、多様性という言葉への違和感や、霧の中を歩いていたような感覚が少し晴れた様な気持ちで今はいます。

面白いから絶対読んでほしい!とは軽々しく言えない作品ですが、衝撃的であり問題作でもあり、そして間違いなく傑作です。


あめふりのおおさわぎ

 作   ディビッド・シャノン
 訳   小川仁央
発 行  2002年7月
出版社  評論社

土曜日の朝、空が急に曇りだして雨がザァザァと降ってきたある町での出来事。

突然の雨にコッココッコと鳴き出したニワトリ。そのニワトリにフーっと威嚇の声を発する猫。そんな猫に犬が吠えかかり、その犬を飼い主のお父さんが叱ったら、家で寝ている赤ちゃんが目を覚まし、「静かにしてよ!」とお母さんが叫びます。その騒ぎを聞きつけたおまさりさんが「どうかしましたか」とパトカーを道に止めて声をかけ、そのパトカーが邪魔で動けなくなってしまった後ろのタクシーの中にいた女の人が文句を言い始め……。ちょっとした小競り合いの大連鎖で町中が大騒ぎ! ところが、突然雨が上がってお日様も顔を出したら、あら不思議。さっきまで怒っていた人たちが笑顔になって「こんないい天気に喧嘩は似合わないね」と、今度はお互い助け合ったり譲り合ったりと、笑顔が連鎖していきます。

雨が引き起こした混乱と、お日様がもたらした平和をユーモラスたっぷりな絵で描いた、読み聞かせにもオススメの絵本です。

これからやってくる梅雨シーズン。家の中でのお楽しみにいかがですか。