皎天舎

《2021年11月16日放送》

SBCラジオ モーニングワイド「ラジオJ」の中で毎月第3火曜日の放送内「Jのコラム」で本の紹介を担当させていただいています。今月の番組内で紹介した2冊の本を改めてピックアップ。

◎書籍情報を記載しますので遠方の方も興味が湧いたら、お近くの書店で探してみてください。


緑陰深きところ

著 者  遠田潤子
発 行  2021年4月
出版社  小学館

偏屈な老人と金髪の若者2人の6日間の旅を描いたロードムービー。

大阪で一人カレー屋を営んでいる72歳の絋二郎の元に届いた1枚の絵葉書。差出人には兄の名前が。それを見た絋二郎に、忘れようとしていたある事件の記憶が蘇る。 50年前、絋二郎の実家の病院内に併設された家屋で起こった殺人事件。殺されたのは兄の妻であり、絋二郎が生涯で唯一心から愛した女性睦子と、その娘、そして睦子の父の3人が包丁で滅多刺しにされ見るも惨い殺され方で殺害された。しかも警察に通報してきた犯人は兄自身だった。絋二郎は愛する人を殺された絶望と恨みを抱きながらも、刑期を終え出所した兄の住処や消息については知らず、事件そのものを忘れようと50年の月日を過ごしていた。
そんな時に届いた兄からの葉書を見たことで再び兄への復讐心を抱いた絋二郎は、兄を殺害するという決意を胸に葉書が投函された場所、九州へと旅立つ決意をする。 愛した女性睦子との思い出の車、旧車コンテッサを中古車店で購入しいざ九州へと向かおうとする絋二郎の前に現れたのは、金髪でいかにも今時風のリュウと名乗る青年だった。聞くと、コンテッサを購入した店の元店長とのことで、不良品である事を黙って絋二郎に車を売りつけてしまった事を悔いていて、この車を返品してほしいという。復讐心に火がついて一刻も早く目的地へ向かいたい絋二郎は、ようやく見つけた念願の車を返すわけにはいくまいと拒否をするが、ならば無事を確認するために旅の最後まで同行することを願い出たリュウを受け入れ、なんともチグハグは2人旅が始まる。

復讐心と恨みに捉われた74歳の絋二郎と、いつもヘラヘラしていて何を考えているか分からない今時の若者の25歳のリュウ。一見相いれない2人に見えつつも、どちらも過去に大きなトラウマを抱えていて、自分ではどうすることもできない秘密と遺恨を抱えていた。そんな2人はぶつかったり喧嘩したり、時には笑い合ったりしながらどうにか九州の地にたどり着くのだが、そこで待ち受けていたのは50年前のあの事件の衝撃的な真実だった……。

偏屈で頑固一徹な絋二郎が、無垢なリュウの態度や言葉に次第に心を開いていく様子が微笑ましかったり、絋二郎とリュウが長い間捉われていた憎しみや苦しみの過去を知って胸が痛くなったり、リュウが隠していた真実に驚いたり、その真実を知った時に初めて見せた絋二郎の人を思いやる態度に涙が滲んだり……とにかく読んでいる私たちの心をひと時も飽きさせず一気にラストまで駆け抜けます。たった6日間の出来事ですが、2人の旅から目が離せない物語です。


あおのじかん

 作   イザベル・シムレール
 絵   石津ちひろ
発 行  2016年6月
出版社  岩波書店

見開きに描かれるのは様々な青の色。真夜中の空の色や瑠璃色、ラベンダー色は想像つくけれど、こなゆき色にマシュマロ色、運動会の空の色ってどんな青???

この絵本で描かれるのは真夜中の空の色になる前の、青の時間を生きる青い生き物たちのお話し。


昼間の日の光が眩しい白色の空から、橙の夕焼け空を過ぎて、夜に向けて次第に空が青へと変わっていく時間、それが「青の時間」。 青の時間の訪れを告げるのは、アオカケス。大きな目とクジャクみたいな綺麗なトサカを被った青い鳥が木に止まってジェッージェッーと鳴き出します。それにつられて青の斑点が美しいコバルトヤクガエルが秘密の会議を開き、可愛らしいアオガラたちは大合唱。どんどんどんどん深くなる青の時間。そんな青の時間の中で、生命力たっぷりに生きている青色の動物や昆虫や植物たちが次々と紹介されます。フサホロホロホロチョウという名の鳥や、モルフォ蝶、ブルーレーサーという蛇などなど知らない生き物たちが多数登場し、こんなにも青の生き物がいるのか!とビックリすること間違いなし。

まるで芸術作品のような繊細なタッチで描かれた様々な動物や昆虫たちが、青の時間を生き生きと嬉しそうに活動し存在している姿に、見ているだけで青の世界に引き込まれます。 絵本としてはもちろんですが、お部屋に飾ってインテリアとしてもおすすめの一冊。