皎天舎

本を贈る

本をつくる現場で「贈る」ように本をつくり、本を届ける人々。執筆者・編集者・校正者・装丁家・印刷・製本・営業・取次・本屋・批評家の書き手から売り手まで、10人のそれぞれの手による珠玉の小論集「本を贈る」が三輪舎から出版され話題となっています。

みなさんに本が届くまで、本がつくられる過程では多くの人の「手」がかけられています。小説、エッセイ、実用書にも同じように多くの人が関わりますが、なかなかその仕事ぶりが表に出てくることはありません。何よりも、一つ一つの仕事にどのような思いが込められているのかを推し量ることは難しいのかもしれません。そうした本をつくる上で欠かせない人々が、本を手に取る人を思いながら自らの仕事に向き合います。

「本を贈る」は、手にした瞬間に、つくり手とのつながりを感じることのできる本です。本が商品になっていく過程で行間に刷り込まれる、それぞれの「思い」が読みとれる本です。目に触れて分かりやすい仕事として装丁は、持ったときに程よく手に引っかかる紙質、緻密で幻想的な装画、「贈」の文字部分の箔押し加工、そして意外なことに、持った時の軽さ。触れたでけで扱いが丁寧になるのは、関わる人々の丁寧な仕事の表れです。原稿を書くこと、原稿をチェックすること、本をつくること、本を運ぶこと、本を紹介すること、本を売ること、それぞれの思いには思想的なことや技術的なことが織り込まれ、次の工程に送られていき、人から人へと渡ります。最終的に本屋でみなさんの目に留まるとき気づくでしょう。みんな「本」が好きなのだと。 本をつくる人々にスポットライトを当てながら、その本を手にする私たちに向けてつくられた本です。

通常書籍の奥付には著者や装丁家、出版社などが記されますが、「本を贈る」では普段目にすることのない校正者や印刷・製本の各工程の担当者までが並びます、これは映画でいえばエンドロール、読み手も含めて作り手と大切な思いを共有できる本です。

 ※ちなみに、初版本では表紙の装画の色が赤でしたが、朝陽館では売り切れてしまいました。現在在庫のある2刷では緑に変更されています。(若干サイズも変わっています)

本は工業製品とはいえ、読者のことを思い、その本を手にした時の感動を呼び起こす「こだわり」の詰まった本がたくさんあります。書かれている世界観を纏うために必要であったり、その本の形を守りたかったり、どうしても譲れない細やかな表現であったり、そんな作り手の思いがにじみ出る本、誰かに「贈りたくなる」本を集めました。読書の喜びを知り、本を愛してやまない「あなた」に贈ります。

以下、三輪舎「本を贈る」特設サイトより転載


本は工業的に生産され、

消費されている。 

本は確かに商品だが、

宛先のある「贈りもの」でもある。 


大切な人が
困っているとき 金銭を送る
だが 私たちは
言葉を贈ることも
できる

目を閉じ
眼を開き 大地に 空に
往来に あるいは書物に
あかあかと燃える
生きる意味を告げ知らせる

いのちのコトバを探せ

 

若松英輔「眠れる一冊の本」より