ずいぶんとお待たせしてしまいました。
あの日から708日。12月10日、喫茶「皎天ノ刻茶房」、雑貨「暮らしの品々 栩栩然」そして新刊書店「書肆 朝陽館」がオープンしました。再建に2年近くもかかってしまいました。
様々な契約を確認しながら以前の会社を清算し、内装を解体、素材を選びながらコツコツと新しい店を作り、『皎天舎』という会社を立ち上げました。
「皎天」は夜明けまえのしらじらと開けてゆく空の様子。始まりが産まれゆくさまを言います。
朝陽を沈めてしまった者としての無念を払拭したくて、夜明け前に遡ってこの店の歴史を飲み込もうとつけた社名でした。
箱を作り内装を整え、本などの商品を並べて準備を進めても何かが足りない。この店は必要とされるだろうか、街を照らす灯りになりえるのだろうか。長い間地下に潜伏するかのように準備を進めてきたせいか闇夜を手探りで歩くような日々でした。
完璧にはほど遠い状態での開店となってしまいました。色々な表示が足りていないし、商品だって少ない。スタッフのトレーニングも十分でない。これはもう全て私の力不足でしかありません。
ところが想定外の出来事がありました。オープンに先立って仲間になってくれたスタッフたちが思いがけず(失礼!)優秀で私を支えてくれました。彼女たちは私が目指すもの、店の在り方をすぐに理解してくれ、準備に励んでくれました。開店してからも次々にアイデアを出しより良い状態へと進んで取り組んでいます。本が足りない状況では双子のライオン堂の竹田さんやミシマ社さんに急遽本を送っていただき助けてもらいました。
不安を抱えながら開店してみると、多くの方々から祝いのお言葉を頂戴しました。お花が沢山届きました。想像を超える大勢の方々がお越しくださいました。馴染みの記者がじんわり来る温かい文章を新聞に掲載してくれました。皆さんそれぞれが、この店に対する想いを持っていらっしゃいました。
今日初めてちょっとしたゆとりが生まれ、店内を見渡すことができました。本棚の間に、カフェのカウンターに、児童書コーナーに人が居る。それを見て、この店にあかりが灯ったのだと実感しました。私が思い描いた光景が目の前にあって涙が落ちそうになりました。この店に足りなかったもの、それは人との関わりでした。
思い起こせば、様々な手続き、工事や資材の手配などたくさんの方々に助けてもらいました。多くのメーカーの皆さんが取引を快諾され商品を送ってくれました。書店の再建に意義を感じた方々が様々な形で協力してくれました。
この店の再建に関わっていただいた全ての方々、ありがとうございました。厚く、熱く、御礼申し上げます。本当に感謝しています。そして、これから出逢う皆さま、心よりお祝い申し上げます。
近所にあったらいいなと思える本屋の箱を僕は作りました。そこに多くの協力者やスタッフが血を通わせ温もりを生み出しています。本屋には夢や希望があります。その一方で苦しみや孤独、悲しみや絶望もあります。多くの方々を後押ししたり寄りそえる店にしたいと思います。本棚はこれからも育ち続けます。時代とともに変化し続けます。皆さんと一緒に。
この灯りを守りつづけ、新たな百年の歴史を刻むよう励みます。これからも応援よろしくお願いします。そしてこの店を思う存分楽しんでください。
皆さまの笑顔や晴れたお顔をエネルギーにして私は火を灯し続けます。
2022.12.13 店主